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小林恭二「宇田川心中」

小林恭二「宇田川心中」を読みました。

出てたのは知っていたのですけれど、なんとなくスルーしていたのです。が、読む本がないので買ったら、相変わらずの、読みやすいというか、異常なまでにするすると読める散文詩的な文章なので、あっという間に読了してしまいました。

「カブキの日」同様に、歌舞伎ネタを今回はメタフィクション的に使って、幕末と鎌倉時代とを行き来するような形式で、700年前から続く、愛というか「因縁」話を、虚実を織り交ぜた(流石に、渋谷道玄坂地下要塞は無かったと思います)かたちで描く、渋谷を舞台にしたマジックアイテムとボスが出てくる和風ファンタジィでした。というと、伝奇ライトノベルみたいですが、そうわかりやすいものではなく、また、単に完成度だけを指向するような正統的時代小説(って、わたしが最近読んだ時代小説系は宮部みゆきと山本一力のそれ、ぐらいなのですが)とも少し違うのです。無理のない文章で過去日本世界を描くだけでなく、その中に、ボスの動機など、世界と整合しない異常性が両立することで、世界の不思議さを感じさせる読後感は、この人の小説ならでは、か、と。

それにしても、これが読売新聞に連載してたってのには(「カブキの日」三島賞受賞時の微妙な石原慎太郎氏コメントの時も思いましたけれど)和風設定と言うだけで日本伝統愛好者に支持されてたのでは、、、と勘ぐってしまうほどに驚きました。この何百年も時代を飛び、100頁ぶりに登場人物が再登場するような小説を、夕刊連載で細切れで読んでた人は、大変だったろうな、と妙なところで感心してしまいました。

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Tracked on 2005.03.27 at 11:22 PM

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