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コニー・ウィリス「航路」

「死」扱う安直な感動もの。悪達者な小説。

「ガダラの豚」「神は沈黙せず」をちょっと連想するような、超常現象に批判的な視点の人がハマル、超常体験実験話。ただ、その実験は臨死体験再現薬によるものなのですけれど、作中人物が言うように、この薬体験と本番臨死体験とが同じかどうかという証拠は、CT画像が似てるってことだけなので、脳波ですべてが還元できるとしたゲーム脳のセンセイに対するのと同じ不信感が漂います。作中だと、疑問を持った作中人物を語り手が馬鹿にするという、作者の筆力に頼ったアンフェアな手法で突破してますが、そのせいで小説自体に好感は持てなくなりました。

最初の百頁ぐらい、自分が理性的であることをネチネチ語っていた筈の主人公が、実験を始めたあたりから思い込みの激しいイタイ人に変わってくので、作中の(薬で再現されたはずの)臨死体験の正体とやらは、薬中毒の妄想なんじゃなかろうかと、思いながら読んでしまいました。そんなわけで、主人公ほど終盤のアイデアには驚けず読了。

作中の臨死体験ネタの(トンデモ系)うさん臭さをごまかすためか、必死で働くER看護婦、災害マニアの難病少女、病院しかいるところのない老人、アルツハイマー看護といった、医者系小ネタ描写入りで、説得力を上げる手法をとっていて、個々の描写はそりゃあ達者な作者らしく読ませますし、「死」が絡むところじゃ泣きもします。けれど、別にそれらが主人公と関係がない小ネタに終始しているので、臨死体験自体の説得性は上がらず、作者の意図だけが透けて見えるあざとい印象。終盤はさらに、美しい自己犠牲泣きが炸裂するのですが、自己犠牲さえすれば、映画「アルマゲドン」のブルース・ウィリスや、アニメ「AIR」美凪編の田村ゆかりでも平気で泣ける以上、1200頁の長編でしつこく語られても面倒なだけだし。

平井堅のラジオ番組で映画「アイアムサム」を、「すっごく泣ける。全然、傑作とかいうわけではないんだけれど」とコメントしていたのを思い出しました。そんな感じの読後感。

中編ならともかく、1200頁の長編のなかに、あざとい泣きとネタとアメリカベストセラー風心理描写以外は特に無い話は読了が辛すぎ。完全義務感で読了しましたが、小説読んでいてここまで苦痛だったのは久しぶり。こういうのがリーダビティの高いアメリカベストセラーなのかもしれないですけれど、もう、この作家は読まないかも。

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