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川原泉「レナード現象には理由がある」

ひょっとして「ブレーメン5」完結以来?川原泉

新作は、一作ごとに主人公が異なる学園もの(桑田乃梨子「月刊1年2組」型)連作×4。初期の「空の食欲魔人」収録作品の頃を思わせる、無愛想青年と平凡女子のラブコメです。

ただ、ロリコンやBoysLoveといった、ネタの取り上げ方に捻りが無く、意外性に欠けるお話だからでしょうか、やや、間延び感が感じられるのが、残念なところです。1話を分載していたからかもしれません。つまらなくはないですが、(比較対象としての偉大な旧作がある)川原泉には、期待値が高くなってしまう不幸があります。

意外だったのは、表紙や柔道シーンでの絵の端正さでした。川原泉に求めているものではないですけれど。(アシスタント?)

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ロン・グーラート「ゴーストなんてこわくない」(扶桑社ミステリー)

SFM掲載の短編が面白かったのと、訳:浅倉久志なら、読みやすそう、という動機で、手に取りました(「電脳麻薬ハンター」作者の「中の人」って、言われても訴求力は…)。

魔術師や精霊が引き起こす問題を「Ghost Breaker(原著題名)」が解決するという、いわば「妖怪ハンター」ものの短編集。ただ、オカルト蘊蓄は殆ど無しで、ナンセンス風味が強く、諸星大二郎のコミカル路線のような、良くも悪くも「たわいない」作品です。シリーズ物なので展開も似通った作品が多いのですが、本作中では、絵面を想像しやすい「待機ねがいます」が、もっとも印象に残りました。

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Special Others「IDOL」

和製ジャムバンド(?)「Special Others」の3rdミニアルバム。iTMSでも配信中ですけれど、Towerrecords特典DVD目当てで、CD購入。

特典DVDの内容は、公式HPやGyaoで時限公開していた表題曲のPVと、「BEN」のLiveでした。公式HPからリンクを張ったYou Tube専用CM(「Fate/hollow ataraxia」体験版のBitTorrent配布なみに珍しい使い方かも?)のほうは付属せず。

短いフレーズを人力テクノ的に延々と反復する作風と、反復からくる奇妙な気持ち良さは1作目2作目と変わらず。表題曲「IDOL」は、ゆっくりしたテンポでフュージョンっぽい印象を受ける序盤の反復から、一転、加速していく終盤が特に良いです。「Manbo No.5」のカバーでも、おなじみのフレーズを、全部ではなく、半分にして繰り返す、という、人力演奏サンプリングな展開は、彼ららしいアイデアで、面白く聴くことが出来ました。

唯一の歌入り曲「Aului」での朴訥な歌声も、反復する曲調に合っています。

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米澤穂信「さよなら 妖精」(創元推理文庫)

前に読んだ「夏期限定トロピカルパフェ事件」で、終盤の意外性が面白かったので、米澤穂信の代表作と言われる作品を読んでみたのですが…ちょっと残念。

無愛想系恋人との帰り道に謎少女を拾う、という冒頭の展開や、無気力系主人公と、ヒロインたちと、彼らの関係に立ち入らない友人だけ、という登場人物の配置から伺える、ギャルゲー臭いノリには閉口。たまにトンチ合戦が入るところがミステリーといえばいえますが、仲良しグループ交際みたいな展開が、前半はゆるーく続きます。

そのまま、ヒロイン萌えのライトノベルに徹するなら、いっそ清々しいのですが、後半は、社会問題がらみの深刻な展開になります。シリアスぶるために社会問題を道具として使うところに、ズルさというか、嫌らしさを感じてしまって、読後感はかなり悪かったです。そりゃ、ヒロインの語る「七つめの文化」の話は、(どこかで聞いた話のような気もしますが)イイ話です。でも、題材自身が感動的な話が小説に含まれていることと、小説の感動とは無関係ですから、加点対象になりませんでした。

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若島正編「ベータ2のバラッド」(国書刊行会)

ニューウェーブSFのアンソロジー。粒ぞろい。

サミュエル・R・ディレイニーによる表題作「ベータ2のバラッド」は、ぶつ切り手記で見知らぬ世界の旅、というと、<未来の文学>ですし、また叙述トリックか、と最初は怯えましたが、そんなことはなく一安心。謎少年ときらびやかな世界イメージが、いにしえのSF少女漫画的で、「ノヴァ」とかの作者らしい作品。アンソロジー中ではもっとも印象に残りました。

ウィリアム・バロウズの引用とかもあって、実験っぽさがバリバリの、バリントン・J・ベイリー「四色問題」は、読み進めるのは辛かったですが、いかにもベイリーともいえますし。他は、ナチ勝利世界を舞台に、反抗美学話のキース・ロバーツ「降誕祭前夜」や、情念描写が「声なき絶叫」とかをちょっと連想させるホラーのハーラン・エリスン「プリティ・マギー・マネーアイズ」は、フラッシュバックとかの無い、古典的な構成で解りやすく、文学っぽい小説といった印象を受けました。リチャード・カウパー「ハートフォード手稿」の元ネタとして巻末に付されたH・G・ウェルズ「時の探検家たち」は、形容詞を読点で繋ぎまくった1文の長さが、いかにも昔の小説らしいです。

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KAO「a jewel box - EP」

4月最終週分のiTMS無料ダウンロードで聴いた「トリップ」が、チャカポコしたバックの音と、うたのおねぇさん的美声と、どこか寂しげなメロディ、という意外性のある組み合わせが気に入りましたので、その「トリップ」を含む5曲入りミニアルバム?をiTMS購入してみました。

他の曲は、バックの音数ばかり目立ってしまい、少し、歌は中に埋もれているような感があります。作中では、シンセ音遊びと職人ポップとが、奇妙なバランスを保っていたTodd Rundgrenの名作「Healing Part II」を連想するような、「Where Is Saturday? (Where is AxSxE? version)」が好印象です。

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ジェフリー・A・ランディス「火星縦断」

「月は地獄だ」meets「ER」とでもいいましょうか。今月号のSFMに掲載の短編と同じ印象。

遭難した火星探検隊が、生還の望みをかけて北極へ向かう、というプロットに顕著なのですが、低重力の宇宙ステーションでは乳房が垂れないとかいう小ネタや、役立たずなメンバーが隠れた才能を発揮して危機を切り抜ける展開など、科学ネタをちりばめたオーソドックスなSF冒険小説の要素もありますが、コテコテの懐かしハードSFなだけって訳ではなく。

登場人物の過去として、子供の親権訴訟やら、ギャングスタの兄弟やら、ゲイの偽装結婚やら、と、現代アメリカ風人間ドラマを展開しています。もっとも、登場人物は基本的にいい人ばかりで、悪人もトラウマ独白な異常者も無しなので、「アリーmyラブ」すら殺伐としすぎて観るのが辛い、人間関係ぬるま湯指向のわたしでも楽しめるくらいにソフトなドラマなので安心です。

短い章立てで、火星探検隊の現在を描くSFパートと、隊員の過去のドラマ・パートとを区切っている構成のためでしょうか、SFパートとドラマパートとは最後まで融合せず、併走している感があります。ミステリ仕立てになっていることが、両者を統合する役割を背負っているとは思うのですが、犯人を含めて全員の心理描写をしたためにミステリ仕立てが、物語の引きになっていないのが残念なところ。ただ、別に二本立てが悪いということはないですし、これはこれでアリ。

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Donavon Frankenreiter「Move By Yourself」

名前を聞いたことがあるくらいでしたが、iTUNESに入っていたライブテイク等含めた4曲入りsingle400円がお買い得に見えたので購入。

The Band系土臭い70年代フォーク・ロックといったところでしょうか。歌声も柔らかくて、好みの音ではありますが、あまりにも、どこかで既に聴いた感があって、新しい音楽を聴く驚きが感じ取れません。表題曲では、Stevie Wonderが弾くベキベキと鳴るキーボードっぽい音を使っていますので、余計70年代色を強く感じます。リズムのどこか打ち込み的正確さは、「今時の70年代もの」の個性でしょうか。

「エルレガーデン」の新曲かと一瞬思った、今週のiTMS無料ダウンロードのYacht.「Surfin' Fish」を聴いた時に感じた、金太郎飴的一定品質での提供する、確立したジャンル(この場合はメロコア)が持つ驚きの無さに共通するような。新しい人がやっている、けれど、新しさとあまり縁のない音楽(別に悪いことじゃないのでしょうけど)かな、と思いました。

新Queen型お客さん大合唱があまりに面白くて、Pall Wellerのライブ盤「Catch-Flame!」から、「A TOWN CALLED MALICE」をiTMSから1曲つまみ食いしたりしていたこともあって、最近、懐古的な音楽聴取態度ですねぇ、自分、と思ったりします。真面目に新規開拓すべき時期かもしれません。

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乙一「銃とチョコレート」(講談社ミステリーランド)

小説(著者紹介での漫画原作って、「GOTH」とかの漫画化を指すのでしょうか?)ですと「ZOO」以来の乙一作品です。

怪盗が登場する前回配本の法月同様に「ミステリーランド」だからでしょうか、名探偵や怪盗も登場はしますが、あくまで脇役。主人公は少年主人公の、巻き込まれ型サスペンス。引っかかり無く、すらすら読めるところは、作者ならでは。

主人公が解くように予め仕組んだ謎を解く、という話なので、やや、段取りをなぞった感が残るのが残念なところ。分量が少ないせいもありますが。名探偵に心酔する少女とか、思わせぶりに出てきて、それっきりなので、設定の未消化感があります。捕まってるのに説教してしまう母親のキャラ立ちぶりとか、どこかアニメの第1話だけを観たような読後感です。

逆に言えば、キャラクターたちの続きが読みたいということでもあります。特に、傲慢(一人称は「おれさま」)かつ残酷ではあるものの、頭は切れるし、大人にも一歩も引かない番長キャラドゥバイヨルは、敵にしたときは恐ろしく、味方にしたときは頼もしい名脇役。次は、彼の話を読みたいところです。

話の可愛いらしさとは、ミスマッチですけれど、平田秀一の挿絵は表紙の猫や、悪役のどアップの怖い感じが、単行本ならではの味。映画「イノセンス」の美術監督という経歴が腑に落ちます。

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SFマガジン2006年7月号「太陽系探査SF特集」

特集は地味系宇宙SF?

ジェフリー・A・ランディス「青き深淵へ」☆1
短編にしては過剰すぎるガジェット量で描く惑星探査の話と、人間関係話とが並行する、TVドラマ「ER」的ノリが今時のハードSFでしょうか。

サラ・ゼッテル「暗黒の中の見知らぬ他人」☆1
有人探査機内で、妄想入った心理サスペンス。短編にしては設定が多すぎて長編のダイジェストっぽくなっていますが、主軸となるサスペンスには、切迫感があります。

ラリィ・ニーブン「ロキ」☆1
本特集に掲載していること自体がネタばれだったりしますが、短い小説ですし、ほほえましい程にベタ過ぎなオチなので、有りでしょうか。

アダム=トロイ・カストロ&ジェリイ・オルション「ワイオミング生まれの宇宙飛行士<前編>」☆2
顔が、ロズウェルのエイリアンそっくりな「普通の少年」の話。人をくったような話が淡々と進むノリには、マジックリアリズム系ほら話の味わいが有ります。後編で、宇宙開発万歳やアメリカ少年時代万歳、といった、安直な落としどころに落とし込まずに、風変わりなままのノリで、終わってくれると、いいのですが。

特集外新連載朝松健「魔境」☆0
黒魔術ウンチクが出る「逆宇宙レイザース」や、ネタが妙に古い「私闘学園」とか、ラノベを(今よりもずっと)読んでいた頃に、読者として追っていた作家の一人。なので、お懐かしや感有り。
本作は、学者主人公の、グロ入り、伝奇もの。膨大な設定をいきなり提示せず、徐々に説明するオールドスタイルぶりは、裏設定の受容を読者に強要するスタイルが主流の昨今、逆に珍しいのかもしれません。

連載田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」☆0
宿敵エゾゲバロ・ログロ人登場で、いよいよ佳境でしょうか?

草上仁「アインシュタインが当たった」☆0
作者の普通っぽさが、コン・ゲームものを面白くするのに必要な熱さを下げていますが、ショート・ショートとしては、まずまず。

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