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サケロックオールスターズ 「トロピカル道中」

気の抜けたトロンボーンに不思議な味わい

司会を担当しているYour Song Is GoodのJxJx氏目当てで、TV番組「スペシャボーイズ」を見ています。見ていますと、もう一人の司会というかいじられキャラの浜野謙太にも、興味を持ちました。で、浜野謙太が、トロンボーン奏者として参加しているアルバムをiTMSにて購入。

トロンボーンをメロディに据えたインストバンド、「サケロック」(聴いた後で調べてみますと、リーダーの星野源は、宮藤官九郎の劇団のひとで、「タイガー&ドラゴン」に、落語家の弟子役で出演していた、とのこと。登場人物の多い作品でしたので、印象には残っていませんが。むしろ、宮藤官九郎の劇団員による音楽と、予断を持って聴いていたら「グループ魂」的な、お遊び感を警戒してしまったでしょうから、先入観が無い状態で聴くことが出来て、ラッキーでした)と、民族音楽系打楽器を演奏する「ASA-CHANG」らとのセッション。

なんと言っても、個々の音がはっきりしていない(客観的には、「下手」と言うべきかもしれません)浜野のトロンボーンのヘタウマっぽさが、印象的。

レゲエ的な、カッカッというリズムをバックにした南国ノリ(のせいでMute Beatをちょっと連想しました)「自問自答百選」や、ポップなメロディと無関係に、手数の多いドラムの音が金属的な「七拍酒」、といった曲に顕著なのですが、ASA-CHANGの打楽器をはじめとした、やや、無機質な感じのリズム部隊から、完全遊離したように緩いメロディのトロンボーンを吹いています。トロンボーン以外は緩くありませんので、緩くて聴きやすいだけのB.G.M.に堕していないところは流石。メロディとリズムが全然別のことをやっている、という点では、2stepに通じるような、独自の中毒性があります。

中でも、チャゲ&飛鳥の(正確にはASKAソロの)カバー、「はじまりは いつも雨」は、原曲での、暑苦しい盛り上がりを台無しにするような、ユルさが、非常に心地よいです。

ヘタウマ音楽的な味わいの作品とはいえ、浜野による、ヘタクソが自棄になって歌っているような歌が入った、「本当の出来事」は、さすがに、痛々しいです。「スペシャボーイズ」内でのハマケン即興歌のコーナーでは、「ハマケン」のいじられキャラぶりもあって、ネタとして笑えているのですが、音楽として1曲は長すぎる気がします。即興歌くらいの分量にとどめておいた方が良かった気が。

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ウェン・スペンサー 「ティンカー」(ハヤカワ文庫SF)

モテる理由の説明がいい加減な(逆)ハーレムものは痛々しい

(和風)魔法と科学が共存する世界を舞台にした話。ただでさえ、ご都合主義に陥りやすい、魔法科学共存ものなのに、主人公にしか理解できない超理論を使って勝つ話ですと、ズルい印象は否めません。いくら、主人公が天才少女とはいっても、主人公の天才ぶりを示す描写が乏しいまま、実は天才でした、と、記号的に説明する、本作の場合は特に。

もっとも、本作の魅力(?)は、設定の独自性にはなく。むしろ、過保護お兄ちゃん、気の回る弟、エルフの王子様(美形)、寡黙なボディガード(美形)、心優しき悪の手下(美形)と、主人公の周りに男たちが寄ってくる、という、女子向けジュブナイルっぽい、逆ハーレムをSFファンタジー世界で展開したことにあるのでしょう。

異種族恋愛もの+女子向けジュブナイル+ファンタジーといいますと、(昔、少々読んでいた)、前田珠子「破妖の剣」を思い出しました。けれど、本作よりは、もう少し、真っ当に、異世界、異種族の描写をしていた気がします。

本作の、エルフの王子様がうっとうしい所の描写ばかりで、魅力を描写しないにもかかわらず、王子様が登場してきた途端、他のキャラは、どうでも良くなってしまうラストでは、作者のキャラ偏愛を、読者に強要するアマチュア的痛々しさを感じました。

アマチュアっぽさは、献辞と巻末での、本編と無関係な楽屋落ちテキストが入っているところにも感じました。マンガの欄外手書き文字みたいなものでしょうか。作者に思い入れが有るときなら、同人誌ノリも嫌いじゃないです。けれど、作者に思い入れのない新人の作品、しかも、伝統あるハヤカワ青背での同人ノリは、正直、見たくなかったです。

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「LIVE DVD 2006 The Adventure Over Yui Horie」

曲やスタッフ弄りは詰まらないが、それらを楽しんでいるほっちゃんは素晴らしい。困る

東京国際フォーラム・ホールAでの堀江由衣コンサートを収録したDVD。

DVD中、堀江由衣がロビーを走るシーンがあるのですが、そういえば、東京国際フォーラムで田村ゆかりを観たときに、中二階みたいな場所が多かった会場だった、という印象を持ったことを思い出したりしましたが。

DVDの内容についても、同じ、アイドル声優コンサートものということで、田村ゆかりの「*Cutie Cutie Concert* 2005 at 東京国際フォーラム」のDVDと対比的に観てしまいます。本作で使用している頭上を写すカメラが田村ゆかりDVDに、無かったのは、ゴンドラのせい?とか、コーラスとの掛け合い曲「スクランブル」でも、アンスキャンダルによるカラオケ音声>客歓声になっていて、田村ゆかりDVDでの、客歓声大きめの音声ミックスは、やはり異常だったんですね、とか。

本編DVD自体は、というと、最後まで崩れぬ鉄壁の笑顔と、ハイ!ハイ!と金属的な高音で客を煽る、堀江由衣の存在感は凄いのですが、いまいち一本調子な感のあった、嘘つきアリスとくじら号をめぐる冒険収録曲を中心としたライブなので、曲の印象は薄いです。空の画像をバックに合成して歌うPV風の「Romantic Flight」、ヘッドセットを付けて剣を振り回しながら歌う「Shiny Merry-Go-Round」あたりは、絵面が面白かったので好印象ですが。

コンサート自体は、曲を聴かせる、というよりは、ラジオ番組「天使のたまご」でのスタッフ参加企画「天たま演劇部」ノリでの、身内スタッフとの寸劇が中心です。可愛い顔で間を持たせることが出来る、主役の堀江由衣はともかくとして、スタッフ側の演技には、学芸会的失笑感が漂い、正直、観ていて辛いものがあります。ただ、2時間にわたるオーディオ・コメンタリー(「天使のたまご」ノリの雑談)での格好のネタ、になっていて、コメンタリーでの面白さに繋がってる以上、これはこれで、ありかもしれません。

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SFマガジン2006年9月号「ダン・シモンズ特集」

作品>作家性な、職人系の作り手の場合、評論・インタビューがつまらなくなるのは、音楽の場合と同じ。

ダン・シモンズ「アブの月、九日」☆0
「イリアム」の評価が低いですので、(単独小説としては、雰囲気ものに終始している)前日譚も楽しめませんでした。

ダン・シモンズ「カナカレデスとK2に登る」☆2
カマキリ型宇宙人と、山に登る話。危機を通り抜けて、友情を深める、という、ベタ過ぎる冒険小説展開と、バタ臭ぁ~い中村亮のイラスト(水野良太郎による、ハヤカワ文庫版キャプテン・フューチャーの挿絵を連想。)とが、マッチしていて、好印象です。

連載 朝松健「魔境」☆0
数ヶ月ぶりの連載で、設定、キャラが、不連続なのは、ちょっと。

連載 田中啓文「罪火大戦ジャン・ゴーレ」☆0
話が進まないかと思えば、また、ラストでしょうもないダジャレを…

草上仁「チューリング・テスト」☆0
宇宙船に乗って、表題ネタ。短編とはいえ、非常に作為的なパズル設定を持ってきておいて、オチが…。

連載 山田正紀「イリュミナシオン 君よ、非情の河を下れ」☆0
今回も、唯我論に、量子論とかの用語をはめ込んでいるだけ。ナノテクノロジー用語を、魔法も同然な便利用語として、使うのは今時のSFっぽくはあります(「イリアム」も…でしたし。)けど、地の文で「だろうか。」「かもしれない。」の連発は勘弁して欲しいところ。

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奥華子「Vol.1~4」

綺麗な割に力強い声の弾き語り

帰宅途中、キーボード弾き語りの女性がいて、綺麗な割に力強い声ですなぁ、と思ってよく見てみたら、細田守版(心優しき気分になる快作!)「時をかける少女」の主題歌を歌っている、奥華子の路上演奏でしたので、驚き。立ち止まって、ちょっと聴きいってしまいました。

演奏後、1枚500円のCD-Rをプチ・サイン会状態で売っていましたので、購入したら握手&サインをして貰いました。握手なんて、2年ぶりです。奥華子は、写真で見るより、華奢な感じでした。

CDは4曲入り×4枚、CDDB登録済なのに少し感心しつつ。

内容は、「私の右側」(Vol.2収録)とか、ちょっとaiko風の変イントネーションが気になったりもしましたけれど、シンプルなメロディのキーボード弾き語りで、Carole King好きなわたしには、素直で非常に聴きやすかったです。作中では、元気な弾きっぷりのピアノが、陽気なナンバー「自由のカメ」(Vol.4収録)や、落ち着いた歌い方と「Hey」という掛け声(といいますか、Neil Young"hey hey my my"的「ヘェ~ィ」)とが、妙にミスマッチで面白い「そんな気がした」(Vol.1収録)、あたりを、特に気に入りました。

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田中ユタカ「愛しのかな 1」(BANBOO COMICS DOKI SELECT)

基本的には、作者短編ノリの、大甘エロだが…

初読時には、設定回収面で、はぐらかしを食らった印象が強かった第5冊目も、破滅SFとして再読してみると、感慨深い「愛人」に続く?田中ユタカの長編第1巻です。

内容は、地縛霊の女の子との同棲ものです。田中ユタカの短編ノリの大甘エロマンガを、おおらかにしたような感じでした。「純愛清楚系美少女マガジン」というキャッチフレーズの(「Dokiッ!」)掲載ゆえでしょうか、地縛霊の設定が、願望充足に都合の良い設定ですなぁ、という印象に終始しました。もっとも、制度化した人間ダッチワイフという「愛人」も、たいがいな設定ではありましたけれど。

第1巻最終話「星々たちの下で」だけは、死にかけた主人公が、黒ベタ画面で自問自答したりして、「愛人」#42話での「何か」との重苦しい対話を連想するような展開で、短編ノリの大甘エロだけではないものを感じました。
もっとも、死亡フラグが立ちまくりの状態から、理由無くハッピー・エンドになる展開の理不尽さには、半分呆れつつも、笑ってしまいました。陰鬱な展開にはしない、という作者側の宣言なのかも、しれません。

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ダン・シモンズ「イリアム」(海外SFノヴェルズ)

「後編に続く」展開とはいえ、キャラ、アイデアともに現状では魅力に欠ける…

「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」2部作同様の、異世界観光SFです。

地球パート、ギリシャ・パート、火星パートの3本立て構成。異世界の描写をするだけの中盤までは結構ダルい展開です。終盤は、「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」2部作同様の、3場面切り替えで、「…ピンチ」次のキャラの章「前のピンチは実は大したことは無かったのだが…次のピンチ」を延々と繰り返して、盛り上がりはします。が、作為性が強い盛り上がりの連発には、さすがに麻痺してきますので、読後の印象はあまり良くありません。

とはいえ、敵キャラが一列に並んで「戦いはこれからだ」エンド、といいますか、後編に続く展開で終わりますので、次巻で、盛り返す可能性もあります。けれど、「ハイペリオン」での、歌いながらラストのような、「ここで終わっても傑作」感はありませんでした。

いまいちな印象になってしまった理由は、皮肉屋の詩人マーティン・サイリーナスのような、愛すべきキャラがいた「ハイペリオン」と比べますと、キャラクターの魅力に乏しいからではないか、と。

ギリシャ・パートの主人公、ホッケンベリーは現代人なので、ギリシャ神話の英雄をシュワルッツェネッガーアンドレ・アガシみたいだ、と比喩する安っぽい感性(というギャグなのでしょうが)、SF小説で読むのは辛かったです。

地球パートでの主人公?、ディーマンのトイレねた繰り返しギャグもベタ過ぎて、笑えなかった(そのせいか、終盤、それまで有能なリーダーだったハーマンをさしおいて、唐突にスーパー・ヒーロー化する展開に爽快感が得られなかったです)し。
火星パートでの主人公、マーンムートオルフの仲良しロボットコンビは、上記二人のように萎える所はなく、好感が持てます。けれど、シェークスピアとかを長々とデータベース引用しながら喋っているのは、イノセンス主人公刑事コンビの会話を連想してしまいました。他のキャラクターも、囚われの神様プロスペローは、マトリックスの(確か)3つ目に出てきた、白服の神様を連想せずにはいられませんでしたし、緑のこびとな集合生命体ゼクは、まんま、ピクミンですよねぇ。

引用した神話ネタ以外のビジュアル・イメージに、既視観が漂いすぎているため、引用/見立て部分ばかりが格好良く見えてしまいます。引用でない、「イリアム」独自のキャラクタ性が感じ取れず、読んでいても、どこか、メタにネタを見ているような感覚が拭えませんでした。

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田村ゆかり「童話迷宮」

目が大きめのジャケット写真は中川翔子を意識しているような気もする、田村ゆかり「Spiritual Garden」に続くシングルは、アニメ「おとぎ銃士赤ずきん」のOP。

「おとぎ銃士赤ずきん」本編は、主人公の筈ですのに、ドラマを背負うのは他のキャラになってしまい、歩く便利アイテム状態になってしまう、という、過去に、田村ゆかりの演じたキャラが「魔法少女リリカルなのは」「極上生徒会」の時に歩んだ道を着々と辿っている気がしておりますが、そんなことはさておいて。曲のほうは、アニメOP使用部分の後、間奏のキーボード・ソロの、どこか、もの悲しい曲調が印象的です。

c/w曲では、「天使のお仕事」での、囁き声+打ち込みのシンセポップという、定番の可愛いらしい曲の中で、Cecilのゆきち詞を連想するような歌詞が、ちょっと捻った乙女ノリで、面白かったです。

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Kirk Franklin「Hero」(国内版)

最近は、殆どGospelを聴くこともないのです。が、「Kirk Franklin」は、Gospelものを聴き出した切っ掛けになった人でもあって、気に入っていましたし、一応、旧譜は「1NC」「Rebirth of …」まで(たぶん全部)追っていますし、どうしましょうか、と思っているうちに、買いそびれていたのですが…ボーナス・トラック付き国内盤が出ていましたので、国内盤を待っていたということにして、自分を騙すようにCD購入。

「Kirk Franklin」は、サンプリングやラップなどといった、今時な要素の入った、クワイアものゴスペルを代表する人。かつて[のライブ・ビデオ「The Nu Nation Tour」では、レーザーがきらめく中、全員でロボット・ダンスから始まる、という、宗教音楽らしからぬ派手さが、楽しかったのです。

新譜も、EW&Fがらみの曲をサンプリングして、Stevie Wonderが歌(と、例の強弱を付けまくったハーモニカ)で参加した、70年代ソウル味の「Why」や、Tears For Fears「Shout」サンプリング(さすがに、物珍しいネタとして使用している、っぽいですが)したバラード「Let it Go」から、オルガンをバックに聖歌隊なコーラスという「Brokenhearted」正統派な造りまで、バラエティに富んでいます。本作中では、James Brown的男声と分厚い女性コーラスとの掛け合いでソウルフルに大盛り上がりナンバーに、ちょっとアラブっぽい節回しの歌がアクセントをつける「Could've Been」の狂騒感が、もっとも気に入りました。

表題曲「Hero」も、淡々としたピアノやオルガンから、一転してドラマチックなコーラスが爆発し、そして、また淡々とした曲調に戻る、展開を繰り返す、面白い曲。歌詞も、「HERO」という言葉で抽象化していますので、キリスト教的でない誤読が可能なのが良いです(とはいっても、歌詞カードの写真ではデカデカと「Jesus Freak」と描いてあるパーカーを着ている人が歌っているのですから、キリスト教的な意味に受け取るべき、でしょうけれど)。

ボーナス・トラックのほうは、白いイヤホンをしたKirkが路上で踊りまくるという、iPODCMネタ「looking for you」のプロモーション・ビデオと、旧譜収録曲。そして、Kirkの旧作「Lean on me」のゴスペラーズによるカバー。「Lean on me」のオリジナルは、Bono(U2)らをゲストに、一フレーズずつ歌うゴスペル風スローナンバーで、ラストはドラマチックに大合唱という、「We are the World」ノリの作品なのですが、ゴスペラーズ版は高音の綺麗な人が中心となった、ウェットな感じのバラードになっています。ドラマチックさが命の曲だと思っていましたので、ちょっと残念。素人「We are the World」的な、Bonoの物まねになってしまうのを避けたかったのかもしれませんけど。

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