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ケン・マクラウド「ニュートンズ・ウェイク」(ハヤカワ文庫SF)

安直

対立勢力の名前が「アメリカ・オフライン」とか、「ビリー・ブラッグ」の名前が出てきたり、っていうのは、政治ネタっていうより、固有名詞を使ったお遊び、に終始した印象です。チャールズ・ストルスの「アッチェレランド」ものみたいに、首までどっぷりネット感性の主人公といった、カリカチュアといえるような徹底ぶりが無いので、ギャグとしても、機能していません。

本作の作者による、SFM掲載の中編「人類戦線」でも政治用語ネタはあって、そこでは好印象だったのですが、中編の場合、少年の視点で進む物語だったため、少年の背伸びした感性の描写として機能していた、ということがあります。本作のような、多視点同時進行小説の場合ですと、作者の視点と言うことになってしまい、固有名詞ネタの作為性ばかりが鼻についてしまいます。

お話は、電脳化によって、死を超越し、超光速航法含めたロストテクノロジーも、ばんばん手に入る世界。遠未来を舞台とした、2004年刊行の英国産SFということで、ストロス「シンギュラリティ・スカイ 」レナルズ「啓示空間」に通じるような、「ポスト・シンギュラリティ」もの?

私が読んだ限りにおいて、「ポスト・シンギュラリティ」って、コンピュータ技術の社会への普及が、あまりにも急速だった状況を前にして、外挿法による未来予測を信頼できなくなった世代の作者が、あげくのはてに、「遠未来」という設定の自由度に居直って、何でも出来るスーパーテクノロジーを連発する、雑な小説のことをいうような気がしてきました。

活劇の面白さに力を注ぐという意図が見える場合は、スペース・オペラの背景設定説明をそこそこで省略する手法もアリだとは思いますが、Zガンダムばりに、エキセントリックな人たちの利害対立抗争、という面白みのないストーリーの本作で、背景テクノロジーが万能ですと、安直な小説、という印象が否めません。

読み飛ばすように読了。

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