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クリストファー・プリースト「双生児」(プラチナ・ファンタジィ)

架空歴史物。

第二次大戦初期のイギリスを舞台にしていて、ルドルフ・ヘスチャーチルも登場していますが、特に歴史蘊蓄自慢が続く訳ではなく、中心は、あくまでも、主人公であるところの、爆撃機のパイロットと兵役拒否者の双子の物語です。

冒頭から、記憶障害者の手記形式、同姓同名の双子、時間シャッフルと、「これから、叙述トリックで騙しますよ。」と言わんばかりのつくりなので、架空歴史の騙し自体には、感心できません。ですが、2つの微妙に異なる歴史と、兄嫁との三角関係も絡んだ双子の精神的距離とを、重ね合わせる作りによって、(叙述トリックものにありがちな)トリッキーなだけの物語になっていないところが、素晴らしいです。

文章は読みやすく、ボート選手の話や、爆撃機乗りの日常パートが、普通に面白いこともあり、小説らしい小説として、気持ち良く、読むことができました。

最後まで、もう一つの歴史が、パラレルワールドとも、主人公の幻想とも取れるように進みますが、「全ては幻想ではなかったはず(496頁)」と、自由意志による選択を思わせるラストで終わります。ちょっと、「逆転世界」での「北へ向かって泳ぎ出す(サンリオ文庫版 394頁)」を連想する、開放感のあるエンディングだったのも、好印象の一因です。

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Arctic Monkeys「Favourite Worst Nightmare」/The ピーズ「HIBIYA-REVENGE」/石川智晶「アンインストール」/Sly & The Family Stone「Greatest Hits」

Arctic Monkeys「Favourite Worst Nightmare」
(一応「The Polyphonic Spree」が目当てです)「Summer Sonic07」の2日目に出かけることにしたこともあって、2日目のトリを務めるバンドの新作を、教養としてチェックしてみましたが・・・トリは、他のを観ることにしましょう。

英国ものっぽい吐き出し声と、カッティング中心のギター、の今時バンド(もう、ニューウェーブ・リバイバルは、ジャンル分類用語としては、死語ですか。多すぎますし。)ですが、ドラムが一本調子で平板な印象。メロディが良いって訳でも、演奏が上手い訳でも、尖ったギターとか、個性的なスタイルが有る訳でもありませんので、聴き所が不明です。

「Brianstorm」あたりの高速縦ノリ曲なら、単調でも別に良いのですが・・・スカっぽい「Fluorescent Adolescent」は、リズム・パターンの平板さが、痛々しいです。

本作に比べると、Killers!!!が、素晴らしいバンドだったような気がしてくるから困りもの。


The ピーズ「HIBIYA-REVENGE」 わたしも観に行った去年のライブを収録したDVD。

(内容については、赤っぽい画像エフェクト以外については、実際に観たものと変わりませんが、)あれから、もう1年経ちましたか、懐かしいです。

今年の20周年ライブは、「新譜出た訳じゃありませんしねぇ・・」と思って、スルーしてしまったら、豪華ゲストだったとのことで、ちょっと悔しかったのですけれど。でも、本DVDでの、アビさんの泣ける台詞「レコード作ろうや」にこそ期待しているのですよ、と言い訳。(まぁ、今年のライブも、DVD化しますよね>キングレコード様。アンケート葉書も出しましょうか無かったので勘違いでした。)

付録のP.V.2曲は初見ですが、あんまりイメージ演出に凝るバンドでもありませんから、凄みはありません。むしろ、特典映像パートで見せる、1年ぶりに野音をぶらつくメンバーのぼやき節の方に、Theピーズらしい味わい深さがあります。



石川智晶「アンインストール」
エヴァの正当後継者的な、子供に理不尽なデスゲームを強いるアニメ「ぼくらの」のOP。(原作未読のせいもあるのでしょうけれど、温く、いい話で纏めていますので、安心してみることが出来て、好印象です。)

OP曲も、宗教的な大仰さのある(高橋洋子的)歌が、ギター・ポップ風伴奏で、聞きやすくなっています。アンインストール=自殺を肯定するようにも取れる歌詞は、ED曲「Little Bird」の癒し系バラードとバランスを取っていると考えるべきかもしれません。


Sly & The Family Stone「Greatest Hits」 紙ジャケ再発。リマスターで、(以前のと較べれば)クリアな音質になったとは思いますが、わたしの場合、所詮は、GracenoteCDDBの便利さに負けて、(音質の評判は今一な)iTunesを使ったMP3化をしているような状況ですから、音質を云々する気も無いです。また、CDはiPODにデータを入れるための道具としか思っていないので、紙ジャケを有難がる気もありません(高さが変わって並べにくくなるだけ、という印象です)。

ということで、未購入だったベスト盤を購入。本作のみに収録された「Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)」は、Slyらしい淡々としたファンクで、かっこいいですよねぇ、やっぱり。

3行前の文章に反して、他の再発盤も、未発表曲目当てで、買うのでしょうか。まぁ、今後ということで。

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田中ロミオ「人類は衰退しました」(ガガガ文庫)

ちょっと、肩透かし

終末SF(なのは、社会を描きたくないからかもしれませんし、250頁という分量のせいか、登場人物を絞りたいからかもしれませんが)。

(key作品とか、ギャルゲー界隈ではお馴染み)おっとり天然ぼけヒロインを語り手にした、新人類である「妖精さん」(イラストはコロボックル風)の観察日誌。

語り手も、「妖精さん」も、ひらがなを多用した会話をするため、とぼけた味わいのファースト・コンタクトものともいえます。が、お菓子を渡してご機嫌を取ったりする「かわいい」ノリに終始していますので、異生物感までは至らず。無常観の無い北野勇作、といった読後感でした。作者は、エロゲー界隈では有名、と聞いてましたので、ちょっと肩透かしな印象です。

もっとも、第1巻表記はありませんが、完結していませんし(「のんびり暮らしました。(完)」もアリですけれど)、全く登場しないキャラの説明をしていたりしますので、「続く。」なのかも。

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BONNIE PINK「Water Me」/SPECIAL OTHERS「STAR」/James Brown「A Family Affair」

最近聴いた曲

BONNIE PINK「Water Me」
シングルから(カラオケ除いて)iTMS買い。c/wの「MAGICAL MYSTERY TOUR」のカバー目当てに購入(ガチャガチャした伴奏に、エフェクトをかけた声のサビ連呼。原曲もサビだけの曲なので、意外性は無し)。
表題曲は、ディストーションギターやら弦やらといった音数の多い伴奏の中に、歌のおねぇさん的な破綻の無い歌声が、埋もれてしまっていて、いまいち。もう一曲のc/w「Gimme A Beat」は、ダンス系の伴奏に、The Sundays風の可愛らしい歌い方が、好印象。



SPECIAL OTHERS「STAR」
ミニアルバムをiTMS買い。
前のアルバムが、ちょっとメロディ系に路線変更気味だったので、不安でしたが、Funk的なベースが印象的な「Surdo」が従来の彼ららしい、フレーズ鬼反復路線が炸裂していて、良かったです。ちょっと安心。「When You Wish Upon a Star」では、芹澤氏のヘナヘナとした歌声も健在で、緩いグルーブ感が戻ってきました。


James Brown「A Family Affair」
「Next Step」に続く新譜ではなく、未発表曲集。
G-Funkっぽく、ピーヒャラと鳴るキーボードで始まる、「Motivation Remix」、ゴスペル・クワイア系でよく聴いた、ファンファンファンファン、って感じのキーボードのフレーズで始まる「God Is Good」とか、ちょっとダサいキーボードの伴奏が多いです。まぁ、力強いJBの声の伴奏としては、主張がない方が良いのかも。

お山の大将感溢れる「Respect Me (First. Respect Yourself)」「I Wanna Be Loved On The "1"」といった題名が似合いそうな、かけ声ソングが中心になりますが、アコースティックギターを伴奏に、泣き曲でドラマチックに盛り上げる「Peace In The World」では、かけ声だけで無いJBの歌を聴くことができ、本作中では、特に印象深かったです。

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ジョー・ホールドマン「擬態―カムフラージュ」(早川書房)

安っぽい
モーフィング(GODLEY&CREME「Cry」みたいな顔変形CG)が珍しかった頃のSF映画のノベライズ風。けれど、ピンチを全て、変身で解決してしまう展開を(絵で観るならまだしも)小説で読むと、安直さしか、ありません。

お話は、不死身で、何にでも変身できる超生物の主人公が、20世紀アメリカで暮らしつつ、人間性を学んでいく、という話と、オーパーツを研究する科学者たちの話の2本立て。

分量が少ない(350頁、2000円切っているのは偉いかも。)せいもありますが、主人公に、超生物ならではの神秘性が全く無いですし、敵はナチ、文学青年はホモ、といった脇役キャラの設定も類型的で、ひたすら安っぽい印象です。ネビュラ賞受賞作ですが、大御所修正と、映画「フォレスト・ガンプ」系の話は、アメリカ人受けが良いってことかなぁ、と邪推することしきり。

後半、科学者との恋愛話まで始めてしまい、敵との対決と、アイテムの秘密を残り僅かなページ数で、どうやって説明するの、と思っていたら、ラスト、隠された力を発動して、あっという間に敵を撃破して、映画「ミッション・トゥ・マーズ」でお馴染み一緒に宇宙へゴー落ち。酷すぎます。

昔話と、長文引用が目立つ解説(高橋良平)も、この作品では、書くことがなかったんでしょうかね。

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ライル・ロヴェット & ランディ・ニューマン、ロバート・グレット「君はともだち」/Pinky Piglets「VICTORY ROAD」/The Mars Volta「Amputechture」

最近聴いた曲

ライル・ロヴェット & ランディ・ニューマン「君はともだち」/ロバート・グレット「君はともだち (ウィージー・ヴァージョン)」
ピクサーのCGアニメ映画トイ・ストーリー1,2の各主題歌。ディズニーもののサントラが、iTMS入りしていたので。

ライル&ランディ版のほうは、ギター弾き語りで、ロバート版のほうは、ビッグバンド風です。歌詞を含め、やさしい歌なので、誰が歌っても楽しい曲です。日本語吹替版エンディングにも手を出そうかなぁ。



Pinky Piglets「VICTORY ROAD」
ワシントン条約ネタだった今週放送分でも相変わらず、投げっぱなしなノリが痛快で、今一番楽しみにしているアニメ「人造昆虫カブトボーグV&V」のED曲が、iTMS入りしていたので購入。
エアロスミス的ギターリフが印象的な曲です。曲間だけとはいえ、番組名シャウトが嬉しいところです(ジャケット電子データが、アニメ仕様なのも


The Mars Volta「Amputechture」
2nd Album同様、今時、全開ハード・プログレな3rd Album。

サックス多めなので、プレ「太陽と戦慄」期のキング・クリムゾン的(「Tetragrammaton」での、音が圧縮されたような質感には、森川誠一郎「Z.O.A」も連想したり)な印象を受けます。「Day of the Baphomet」「Meccamputechture」と、10分以上の大作が続く構成の割に聞きやすいのは、低音ドカドカではなく、手数の多いドラムのおかげで、耳が疲れないからでしょうか。

それでも、朝の通勤時にアルバム通して聴くと、腹にもたれてしまいますけど。

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映画「監督・ばんざい!」

「みんな~やってるか!」、「TAKESHIS'」よりはるかにまし。
北野映画の新作はオムニバス。

「と、いう映画を作ろうとしましたが、お蔵入り」といったナレーションが入り、途中で終わってしまう話の断片ばかりですが。まぁ、通常の北野映画自体、物語として完結せず、断片で終わることが多いですから、特に、違和感なく。北野監督人形の内部を写す冒頭から、個々の作品は監督の内面云々といった、メタ邪推もできますが、メタっぽい構成は、むしろ、短く済ます為の言い訳のような気が。

ただ、メタな構成を含む映画に有りがちな、入れ子構造で無く、1つの話が終わってから次に行く、という分かり易い構造の為、見やすいですし、個々の話が短いため、小津パロ、貧乏子供もの、不器用恋愛もの、マトリックスもどき、忍者もの、SF、ドタバタの7本立て100分というコンパクトさは、有り難かったです。

特に後半、鈴木杏と岸本加世子が走り回る、親子ドタバタものは、北野映画っぽい棒立ちキャラが少なく、バラエティ入ったTVドラマのりだからでしょうか。普通に楽しめました。蝶野天山のラーメン屋とか(北野大杉漣の天文学者二人、程のインパクトは無いですが)、とか、観ているだけで楽しものもありましたし。正直、コメディと聞いて、期待度ゼロでしたので、かなり好印象です。

「なぜか笑介」的ズッコケや、たけし軍団のギャグには辛いものがありましたが。

2007.06.02シネセゾン渋谷にて鑑賞。

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映画「マリー・アントワネット」

監督の映画

嫁入りした異国に馴染めず苦悩しますが、子供が出来てからは、別荘で幸せに暮らしました、という話。

嫁入りから、フランス革命前夜までのお話ですが、時代ものっぽさは乏しいです。フランス宮廷という舞台は、主人公の少女が世界に感じている違和感、を表現するための装置でしかないと、いいますか、監督のソフィア・コッポラが、少女の自殺ものを撮った人らしい、と聞いて納得してしまう感じ。

異国に馴染めない理由の大部分が、主人公の性格にあるように描いている(夫は、不器用ですけれど、いい人、という風に描いているので、キルステン・ダンストの演技力問題っていうわけではないと思います。)ので、主人公の苦悩に同情出来ないのですが、監督(に共感できる少女感性の持ち主たち)には、「何故、世界に違和感を抱いているのか」なんて、説明するまでもないことなのかも。唐突な上に、後に続かないフェルゼンとの浮気話も、ついて行けませんでしたが、すごく苦悩していたことの裏返し、と解すべきなのでしょう。

監督の自己満足という気もしますが、最後まで徹しているので、スタイルと割り切って観ることが出来ましたので、さほど悪印象は無く。

目当てだった、予告編で掛かっていたGang of FourをB.G.M.に贅沢三昧、という痛快シーンは予告編使用部分がほぼ全部なのは残念なところ。ダンスシーンのB.G.M.とか、NewWave系ってので脱力した笑いが出来たのは良かったですが。

2007.03.23新宿武蔵野館にて鑑賞。

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遠藤淑子「ピーチツアー」(幻想コレクション)

桃太郎モチーフの和風ファンタジィ。

裏設定に凝るタイプの作者ではないので、全般的に薄味な作り。ですが、最終話(「第5話」表記なので、続くのかな?)での雉若丸の台詞「自分自身を許す」には、作者らしい優しさがありました。

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SFマガジン2007年7月号「ワールドコン特集 I」

わたしの英語力ですと、ワールドコン行ってもなぁ・・・

マイク・レズニック「きみのすべてを」☆1
ミイラ取りがミイラに展開は、ショート・ショート的、分かり易さ。

ロバート・リード「八つのエピソード」☆0
架空ドラマの粗筋。

ブルース・マカリスター「同類」☆0
少年と宇宙人との心の交流もの。分量が少ないので、定番パターン以上の印象は無く。

ティム・プラット「見果てぬ夢」☆1
ニコラス・ケイジ主演の「スーパーマン」とか、話はあったけど作られなかった映画をネタにしたパラレルワールドもの。願望充足ものっぽい結末に、作者の悪意が見え隠れ?

連載 朝松健「魔京」☆0
応仁の乱編開始。前とイメージが変わらないまま、設定だけ入れ替えている話を数ヶ月おきに読むのは・・・

連載 田中啓「罪火大戦ジャン・ゴーレ」☆1
話は進んでいないのですが、ピンクが活躍したので。

マイケル・F・フリン「夜明け、夕焼け、大地の色」☆1
関係者の小エピソードを組み合わせで描く手法は、不可知な事件を扱ったSFの定番手法。9.11に結びつける解説は牽強付会の印象。

小説以外では、評論の新連載、宇野常寛「ゼロ年代の想像力-「失われた10年」の向こう側」☆0
エヴァンゲリオン東浩紀を仮想敵に、対比して近年のオタ系流行作を持ち上げるサブカル。「Fate」も含めて、デス・ゲームものは、不条理なルールを押しつける点で、「早くしろ、嫌ならば帰れ」とルールを強制する碇ゲンドウエヴァの正嫡、と思っていたので、対立構造視には違和感がありました。

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