« 芦奈野ひとし「カブのイサキ 1」(アフタヌーンKC) | Main | シルフ Vol.4(アスキーメディアワークス) »

山田正紀「神獣聖戦 Perfect Edition (上)(下)」(徳間書店)

旧作の名を汚さない力作

全5冊のタイトルまで発表していたシリーズを、3巻あとがきで「どうでもよくなってしまい、」と放り投げた「神獣聖戦」。で、3巻収録の「落日の恋人」での綺麗な纏まりをぶち壊す、4冊目「魔術師」でのコンピュータ・ゲーム風展開の陳腐さに呆れた記憶から、20年が経ちました。

20年後の「Perfect Edition」は、当初、5冊目の仮題「舞踏会の夜」モチーフを含む上巻と、旧作からの抜粋+「SF JAPAN」先行収録部な、下巻の内容は、完結編というより、旧作設定をパラレル・ワールド的に捉えた、一種のリミックス作品でした。

a~ha「テイク・オン・ミー」(実写と線画とを行き来するプロモーション・ビデオが念頭?)を使ってのパラレル・ワールド説明には、相当、無理矢理感あります(東急VS西武と「~のソ連」ネタは、吹き出してしまいました)が、元来、力業が作風みたいなこの作者の場合、この強引さは、アリ。実際、2008年という、経済状況をはじめ、世の中の先行きが不明で、外挿法的な未来世界には説得力ゼロな現在、現実と地続きの異世界を描くには、これ位の無茶は「必要」なのかも。少なくとも、不可知論に居直るシンギュラリティ系よりは、(無茶してる意志が伝わる分、)誠実さに好感が持てる方法論です。

新作パートでは、近作の「イリュミナシオン 君よ、非情の河を下れ」(SFマガジン連載中)同様、毒電波妄想が炸裂していますが、具体性有る旧作パートと組み合わっていて、小説の一部になっているので、違和感無く読ませます。何でもアリな、パラレル・ワールドものなので、お話に緻密さは無いですが、旧作パートでは勿論、新作パートでも、作者らしい熱っぽい文体が味わいの力作で、少なくとも、「神狩り2 リッパー」よりは、遙かに良い読後感でした。

|

« 芦奈野ひとし「カブのイサキ 1」(アフタヌーンKC) | Main | シルフ Vol.4(アスキーメディアワークス) »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/11715/43216563

Listed below are links to weblogs that reference 山田正紀「神獣聖戦 Perfect Edition (上)(下)」(徳間書店) :

« 芦奈野ひとし「カブのイサキ 1」(アフタヌーンKC) | Main | シルフ Vol.4(アスキーメディアワークス) »